三十一文字

朝ドラ『舞いあがれ!』から生まれたアンソロジー。偶然目にした俵万智さんのツイートに導かれて番組を見始めた。短歌を読むことには近づけたが、短歌を詠むまでには今のところ至っていない。

 

 

生の肯定

定年後の過ごし方の指南書だと手に取ってみたが、それだけではなかった。「ただ生きる」とは奥が深い。

…生の最初に「ただ生きている」ということを肯定する考えがなければならない…(略)さらに生の途中か、あるいは終わりの方かは知らないが、「ただ生きていてくれればいい」という願いがありうることを認めるべきである。(p218)

 

 

ちょっと変

認知症の一歩手前で「すごく変」ではなく「ちょっと変」が特徴の軽度認知障害(MCI)。65歳以上の7人に1人はMCIと言われているが、認知症へ進むのを止められることがある。(p013-014)

この説明に安心している私は、この本を読んでも認知症を受け入れるまでには至っていないのだろう。

 

 

哀しき人びと

刺激的なタイトルだが、芥川賞作家の筆致は淡々としていた。詐欺や欺瞞の術を持って社会のどん底から這い上がろうとする欲望の動物になる以外、生きる道が残されていない(p2)人びとへの哀しみが溢れ出ていた。

 

 

あれこれ試そう

ベストセラーの『80歳の壁』『ぼけの壁』より以前に出版された本で、後に続くこの2冊のエッセンスが詰まっている。

「どのような形であれアウトプット型の行動スタイルを心がける」(p83) このアドバイスは今後も意識していきたい。

…(略)…寿命が伸びていくこれからの時代は、事故や、まだ解明できていない病気で早死するか、100歳近くまで長生きをしてボケて亡くなるかのどちらかという時代になってくるはずです。(p27)

これは何ガチャというのだろうか。

 

 

当時の朝鮮を知る

著者は1894年から1897年にかけて調査の一環として4度にわたり朝鮮を旅行した英国夫人。朝鮮各地の紀行文のみならず、当時の風習、社会の様子が描かれている。李氏朝鮮の高宗、閔妃夫妻にも謁見できる一方、貧しい農民の生活にも目が向けていられてる。

…朝鮮じゅうのだれもが貧しさは自分の最良の防衛手段であり、自分とその家族の衣食住をまかなう以上のものを持てば、貪欲で腐敗した官僚に奪われてしまうことを知っているのである。(p433)

日本は日清戦争(1894〜1895年)を経てこの国に大きく関わろうとしていた時期で、日本に対しても第三者の立場で評している。また朝鮮の人々の日本人にへの思いも何度か登場する。

…人々は日本人に対してひとり残らず殺してしまいたいというほど激しい反感を示していたが、(略) 日本兵の品行のよさと兵站部に物質をおさめればきちんと支払いがあることについてはしぶしぶばがらも認めていた。(p441)

今もそれほど変わっていないのかもしれない。